なぜ人間がこれないのか。明確な理由が分かってより安心感を得た。

それでも聞きたい事は山ほどある

何故私はここにいるのか

不花は何故あのような扱いを受けているのか

森で最初に話をしていたあれは誰なのか

その子がいっていた私を歓迎しているとは誰が歓迎しているのか

ジンさんは何故私を助けてくれたのか

私は、元の世界に帰れるのか

疑問を上げ始めるときりが無い。

ジッと手元の地図に視線を落としながら、悶々と考える。何をしようにも、何を調べようにも、圧倒的に知識が足りない。

この世界は間違いなく異世界だろう。現に目の前にいるゲンさんの耳や尻尾は本物のようだし。

これが夢でない事も確かだ、治療してくれた膝が未だにジクジクと痛んでいる。その痛みが、ここが夢の世界ではないといっているようだ。

「聞きたいことがあれば、遠慮なく聞いてくれ。俺の知っている事なら、全て答える」

すべてを見透かしているようなタイミングで言われて、心臓が跳ね上がった。

きっと流れから親切に聞いてくれたのだろうが、バクバクと心臓の鼓動は早い。

「えっと、聞きたいことは沢山あるのですが、その前に」

椅子を軽く引くと、立ち上がりその場で深々と頭を下げた。

いろいろとパニックになっていたが、助けてくれた事や手当てしてくれた事に対するお礼がまだだったのに気がついたのだ。

お礼を一番にするのが常識なのに恥ずかしい限りだ。

「改めて御礼を…。倒れている所を助けていただき、手当てや食事まで、本当にありがとう御座います」

ジンさんが息を呑むのが分かった。すぐにふっと笑う声が聞こえる。

「いや、構わない。気にしなくていいから、座りなさい」

ちらりと頭を上げると、ジンさんは頷く。その表情は柔らかで、胸を撫で下ろしながら椅子に座り直した。