「ご馳走様でした。美味しかったです、ありがとうございます」
頭を下げると、彼は小さく頷き食器を下げてくれた。そして再び戻ってきて、向かいの席へと腰をかけた。
「もう少し眠っていたかもしれないが、聞きたい事がある」
いいか??とたずねられ、勿論と頷いた。
むしろこちらも聞きたい事が山のようにある。
「まずは自己紹介だな、俺はジン。君は??」
「森野陽菜といいます」
「モリノヒナ??」
「えっと、名前は陽菜です。苗字が森野」
「苗字とは家名の事か、名がヒナだな。ではヒナ、君は何故あんな場所に倒れていた??」
何故といわれると、話せば長い。簡潔に分かりやすくどう伝えようかと、悩んでいるとジンさんは小さく笑みを浮かべ口を開いた。
「長くても問題ない、聞かせてくれ」
この人に全部話しても良いのかと一瞬迷いもした、でも自分やあの老夫婦や町の人たちにはない耳や尻尾を見て安心感を覚えたのは事実だ。
普通は腰を抜かすほど吃驚するだろうけど、今は人間を見たほうが腰を抜かすほど吃驚する自信がある。吃驚というか恐怖か。
どの道、わけが分からないままで困る。
この人なら、話しても問題ないかもしれない。
私は頷くと、なにがあったのかを、覚えている限り詳しく話した。