始まりは、いつも唐突にやってくる。
「森ちゃーん、オムライス急ぎでー」
「はーい、急ぎまーす」
卵をフライパンに流しいれ、大きく返事を返す。すばやくオムライスを作り上げて用意されていたお盆に乗せた。
うん、我ながら完璧な出来だ。
「急かしてごめんね!!ありがとう」
「いえ、すいません。お願いします」
「はーい、いってきまーす」
駅前にあるレストラン「ティターニア」の厨房。
その日は連休の中日ということだけあって、人足が絶えない。大量にあったオーダーを作り終えた厨房は、全員がやっと息をついてお疲れと力なく互いを労っていた。
私、森野陽菜も同じように近くの子達と声を掛けあっていた。
「森ちゃんおつかれさま~」
「おつかれさまです~」
いやはや疲れた。
なんとかピークが過ぎたようで、オーダーの量が落ち着き始めた。
達成感からかハイテンションになったバイトの子達を、疲れ無しかと驚愕の眼差しで眺めていると料理長に肩を叩かれ振り返る。
「森野そろそろあがれ。今日は遅くまですまんな」
「……え、あ、もうそんな時間なんですね」
言われて時計に目をやるととっくに定時は過ぎており、慌てて帰る準備をした。
「それじゃあ、お先です」
まだ仕事をしている人たちに頭を下げ裏口から店を出る。裏口のドアがガチャリと閉まった瞬間、達成感、開放感、そして疲労が一気に体に押し寄せてきた。とりあえずグッと背伸びをする。
かなり疲れた、今日はお昼もハードだったしなぁ……。
高校を卒業して、進学ではなく今働いているお店に私は就職した。仕事を始めたばかりの頃は、何もかも学生のときとは違い、めまぐるしく日々を過ごしていたがそれも二年目になると少し慣れてくる。
職場の人たちは喧嘩をするときもあるが基本は皆優しく仲が良いので、いい場所に就職できたと満足はしていた。
ただ一つ気がかりな事があるといえば、大学に進学した友達との温度差がかなりあり、仲の良かった友達と疎遠になってしまった事だ。
高校時代ずっと一緒にいたグループは私以外みんな同じ大学に進学していて、後はなんとなく察してほしい。
昔一度だけ卒業して、就職、進学が落ち着いてからいつものメンバーで遊んだ事だあった。
そのとき、話に一切ついていけず自分だけ別世界に居るような気分を味わったのだ。あれが疎外感というやつなのかもしれない。
自分とは違って充実したキャンパスライフを送っていた友達が、異様にキラキラして見えたのだ。正直うらやましいと思った。
そこから連絡を取るのが怖くなり、そのまま自然に疎遠になっていった。
進学してたら、こんな気持ちにはならなかったのかもしれない。高校のときのようにすごく楽しい毎日を送っていたのかも。
「……ってなにを考えてるんだ」
考えを振り払うように頭を振り、肩にかけた鞄を持ち直した。
駅の改札を抜け、電車を待つ。混み合う時間はとっくに過ぎているため、人はまばらでスーツを着た人が多い。時間を見ると、電車が来るまでもう少しかかりそうだった。
待ってる間、少し休もうと近くの椅子に腰をかける。
うつろうつろと視界がぼやけ始め、これはまずいと立ち上がろうとした。しかし、上手く足に力が入らず、抗う事も出来ないまま眠りについてしまった。