颯ちゃんは、白いお札に願い事を書くと、碑の前に立った。

 表面から碑の中央の穴をくぐった颯ちゃんは、願い事を書いたお札を碑に貼ると、碑に手をついて、目を瞑る。

 願い事をかけているのだろう。
 彩乃さんと病の悪縁が必ず切れますように……と。手術が成功しますように……と。

 颯ちゃんは、また穴を通って表側へ出てきた。
 颯ちゃんの一連の動きを見ている彼女の色は震えていた。きっと彼女の瞳も震えているに違いない。

 震えながらも颯ちゃんの姿をそっと写真に収めた彼女は、颯ちゃんに近づいて言った。

「颯也さん、ありがとうございます」

「…………」

「もうこれで充分です。この写真と思い出があれば、妹は頑張れます」

「そうですか」

「はい……」

「よかった……」

「妹のたらればは、全てやりつくしました。これで妹の初恋は思い出にできると思います。やっと前へ……進めると思います」

「お役に立ててよかったです……。手術、がんばってくださいね」

「ありがとうございます。妹に伝えますね」

「またお会いしましょう。今度は恋人のフリではなく、友人として、彩乃さんにお会いしたいです」

「え……」