二人は石階段を上がり、清水寺へと吸い込まれていった。
そのまま二人は清水寺を楽しみつつ、清水境内にある地主神社へ行くのではないかと私は思った。
地主神社とは、縁結びの神様として絶大な人気がある神社で、恋人たちの聖地。もし、恋人同士なら、初めてのデートなら、行きたいと思う女の子は多いはずだ。
そして、二人は恋占いの石の前でも写真を撮るのだろう。
次、颯ちゃんはどんな表情をするのだろう。
笑顔?
それともまたひきつった顔?
ああ、もうイヤだ。こんなこと考えたくない。
「うわっ、見失った。あの二人、どこいってん」
清水寺の中までついていこうとする、恭太郎のTシャツの裾を握った。
「恭太郎、もういいよ。帰ろう?」
「でも、気になるんやろ? 朝からずっと浮かない顔してたやん」
「……そんな顔してないよ……」
「今も同じ顔してるし。それにな、俺には責任があんねん」
「責任?」
「そうや。女に悪さをするかもしれん颯也相手にデートを進めてしまった。俺は雪乃さんが無事かちゃんと見届けやなあかん」
「何それ、颯ちゃんは紳士だよ? そんなことするわけないじゃん!」
「いや、わからん。男は綺麗なお姉さんに弱いんや。だから、勝手に颯也を信用してるお前にも責任がある。雪乃さんの無事をちゃんと見守れ」
「えええ」
なんだか、颯ちゃんのデートをのぞき見したい恭太郎に、うまく言いくるめられた気がするんだけど。
「ほら、行くぞ」