「優しく笑う颯也の写真を撮るとか……、うえ~」

 しびれるほどの冷たい視線に気づきもせず、颯ちゃんのはにかむ笑顔を想像しているのであろう恭太郎の顔が真っ青になっていく。

 そんなひどいことしないでほしいと私は思う。そして店内の氷、早く溶けて……とも思う。

「じゃあ、誰がするの……」

 ぶつくさとそう言うと、恭太郎はどや顔で言った。

「だから、お姉さんがデートしたらええねん。妹さん想いのお姉さんが、妹さんが欲しがりそうな写真を撮ったらええ。妹さんもこんな小娘が撮ったピンボケの写真より、お姉さんが撮ったほうが喜ぶと思うで?」

 恭太郎の言うことはやはり正しいのだろう。

 颯ちゃんが誰かとデートをするのは……嫌だけど。妹さんの気持ちを考えると、お姉さんが相手役となり、妹さんが欲しいと思うであろう写真を撮るのが一番だと思う。
 ……複雑な気持ちには変わりはないけれど。

 思い悩む颯ちゃんとふいに目が合った。

 私がコクンと頷くと、颯ちゃんは唇を結んで口角を上げて、言った。


「わかりました。では、雪乃さん、よろしくお願いします」