厚かましく、本当のデートをしてほしいなんて思っているわけではない。

 ただ写真映えする場所で、何枚か彼女目線の写真を取ればいいだけなら、私にだってできるはず。

「ダメ……でしょうか?」

 こんなことを自分から言うなんて恥ずかしすぎる。
 それでも言い出したと言葉は取り消せない。

 私は真っ赤な顔を見られないように俯いた。

「あほか、何言いだすねん。そんなもんあかんに決まってるやろ」

 けれど、答えたのは恭太郎だった。

「でも……」

「でも、ちゃうわ。妹さんからしたら、デートの相手が誰でもいいわけないやろ。こんな小娘とデートした写真なんてもらっても、ええ気はせんやろ」

 恭太郎の言うことはもっともだと思った。
 もし私が彩乃さんなら、颯ちゃんに恋をする女の子が撮った写真は、なんとなく嫌だ……。

「じゃあ、恭太郎は? 恭太郎が颯ちゃんとデートしたらいいじゃん!」

「はあああああ? なんで俺がおっさんとデートしやなあかんねん! 気持ち悪い!」

「それは僕のセリフですよ? さすがの僕も、男相手に優しく笑えません」

 そう言って、恭太郎を見降ろす颯ちゃん。

 願中にある光が、刺すように冷たい。
 冷え切った目から出る冷凍ビームは、店内を凍らせるほどの迫力がある。