なかなか和菓子に手が伸びないことに腹を立てたのか、恭太郎が暖簾の奥から顔を出した。お客様は一人で、この話は厨房まで筒抜けだったのかもしれない。
「颯也のデート写真が欲しいなんて、変わった女がいるもんやな」
「恭太郎」
私はシーと口元に指を立てる。
「しかも相手がいいひんとか言うてるし。なんやあれ、かっこ悪」
恭太郎は颯ちゃんのことになるとめっぽう辛口だ。
そこまで言わなくても……と思いながら、私はなんとかならないかと考えて、重たい口を開いた。
「あの……えっと……、私でよかったら……写真くらい……撮れますが……」
ずっと心の中で思っていた。
颯ちゃんが仮といえ、知らない女性とデートするくらいなら、私ではダメだろうか。