妹の彩乃さんは昔から体が弱く、たびたび学校を休んでいたそうだ。

 なんとか高校へは入学できたが、入学式以来ほとんど学校へ行けなかった。
 入学式から一か月が経ち、体調が良かったある日、彩乃さんは学校へ行った。
 けれど、そこには、彩乃さんの居場所はなかった。
 完全に女子グループができていて、グループの輪を乱さないことに皆必死そうに見えた。

 それでも、負けずに登校していた彩乃さんだったが、休みがちだったため、勉強についていけなくなり、話す相手もおらず、学校へ行くことをためらうようになったそうだ。

 再び、入院、手術が決まった彩乃さんは、特別支援学校へ行くことに決めた。病気で学校に行けない子どものために、特別支援校の先生が病院を訪問し、勉強を教えてくれる制度を利用するためだった。

 地元の高校最後の日、彩乃さんは日直当番だった。ペアは、颯ちゃんだったそうだ。

 家に帰ってくるなり、笑顔満開の彩乃さんは、姉である雪乃さんに颯ちゃんの話ばかりしていたそうだ。

 かっこよくて、優しくて。

 私……、彼のことを好きになったかもしれない、彩乃さんはそう言った。