木製の店内は、和モダンな雰囲気になっている。

 カウンターに五つの席を用意し、その奥に四人掛けのテーブルが二つある。お世辞にも大きいとは言えない店内だが、私も颯ちゃんもこの店を愛していた。

 彼女が選んだ香木は、「伽羅」。聞香体験で使う香木の中では一番高級な香木だ。

 産地が限定的なうえ、産出量も少なく、たいへん貴重な香材であるが、月令香で扱う香材と一緒に取り入れることで、手軽な値段で楽しめる価格に落ち着いた。

 それでも、三種の香木の中では一番高価な聞香体験となる。
 彼女は一通りの説明を聞き、心を傾けて聞香を楽しむ。

 聞香が終わると、恭太郎が和菓子と煎茶を運んできた。