雪乃さんは朗らかに「ありがとう」と言った。
「本日は、聞香カフェメニューでよろしいでしょうか?」
「ええ。伽羅でお願いできるかしら?」
事前に勉強してくれたのだろうか。それとも初めから、香道に詳しい人なのだろうか。
すぐに「伽羅」の名を告げた人は初めてで、私は驚きながらも彼女をカウンターの席へ案内した。
香木は、伽羅。和菓子は、水かがみを選ばれたことを奥にある厨房へ伝え、颯ちゃんには先日お手紙を持ってこられたお客様であることを伝えた。
彼はわかりましたと答え、伽羅の香木と電気香炉を持ち、暖簾をくぐって表へ出た。
私は彼の所作を勉強するために、隣に立つ。
「いらっしゃいませ」
「彼が……三ツ井颯也さん?」
電気香炉をセットしている颯ちゃんを見つめて、雪乃さんが言った。
問われている相手は、彼の隣に立っている私だと思い、「はい」と答える。
「彩乃、イケメン好きやったか」
雪乃さんは、横を向いて、ぽそりと独り言を呟いた。
あ、今の聞こえちゃいましたよ。
聞こえたのは私だけだったのか、颯ちゃんが何事もなかったかのように雪乃さんに声をかけた。
「先日はお手紙をありがとうございました。直接受け取れなくて、申し訳ありません」
「いえいえ。定休日も調べもせず、来てしまった私がいけなかったんです。でも、あの時バタバタしたまま、このカフェへ来なくてよかったと思いました。だって、こんな素敵なカフェだもの、ゆっくり楽しみたいじゃないですか」
「ありがとうございます」
私たちはゆっくりと頭を下げた。
「本日は、聞香カフェメニューでよろしいでしょうか?」
「ええ。伽羅でお願いできるかしら?」
事前に勉強してくれたのだろうか。それとも初めから、香道に詳しい人なのだろうか。
すぐに「伽羅」の名を告げた人は初めてで、私は驚きながらも彼女をカウンターの席へ案内した。
香木は、伽羅。和菓子は、水かがみを選ばれたことを奥にある厨房へ伝え、颯ちゃんには先日お手紙を持ってこられたお客様であることを伝えた。
彼はわかりましたと答え、伽羅の香木と電気香炉を持ち、暖簾をくぐって表へ出た。
私は彼の所作を勉強するために、隣に立つ。
「いらっしゃいませ」
「彼が……三ツ井颯也さん?」
電気香炉をセットしている颯ちゃんを見つめて、雪乃さんが言った。
問われている相手は、彼の隣に立っている私だと思い、「はい」と答える。
「彩乃、イケメン好きやったか」
雪乃さんは、横を向いて、ぽそりと独り言を呟いた。
あ、今の聞こえちゃいましたよ。
聞こえたのは私だけだったのか、颯ちゃんが何事もなかったかのように雪乃さんに声をかけた。
「先日はお手紙をありがとうございました。直接受け取れなくて、申し訳ありません」
「いえいえ。定休日も調べもせず、来てしまった私がいけなかったんです。でも、あの時バタバタしたまま、このカフェへ来なくてよかったと思いました。だって、こんな素敵なカフェだもの、ゆっくり楽しみたいじゃないですか」
「ありがとうございます」
私たちはゆっくりと頭を下げた。