「年上は、偉そうにしていいんですか?」
私の発言に、颯ちゃんがクスリと笑う。きっとまた子ども扱いが始まったのだ。
「ち、違う! 今のは、言い間違い。偉そうじゃなくて……敬語をやめて普通に話してよ。年下の私に、一香さんって言うのもやっぱり変だよ」
「ほな、一香って呼んでええんか?」
突然、敬語がなくなり、呼び捨てにされた。
そうか。この人から敬語を取ったら、関西弁になるんだ……。
「な、ななな」
突然現れた関西弁に戸惑っていると、流し目で、見下ろされた。
丁寧な口調じゃない颯ちゃんは、急に男っぽくて、私はどうしたらいいのかわからない。
「一香がそう言うなら、全部やめてもええけど、大丈夫か? そんなに顔、赤くして」
「む、むむむ」
「ね。一香さんには無理でしょう? ですから、僕はこのままのほうがいいんですよ」
「はい……」
有無を言わさず、このままの関係を突きつけられてしまった。
九歳も年上の男性に敵うわけない。そんなことわかっているつもりだったけれど、なんだか手のひらで転がされている気分だ。