目の前で繰り広げられる京都弁の親子喧嘩にどのように反応していいかわからず、さらに困惑していると、恭太郎の隣に立つ、恭太郎の母親の美津子さんが言った。

『一香ちゃん。綺麗なお嬢さんになったなぁ。昔は、”綺麗”よりも”かわいい”女の子やったのに、ほんま女の子の成長は早いなぁ。一香ちゃんは、これからさらに着物が似合う雅な女性になるんやろうな。花さんいつも話してはるで。一香ちゃんが京都に来ることになった。嬉しい。幸せやって。うちは男だけでむさくるしいから、花さんがうらやましいわ。一香ちゃん、よかったらいつでもウチに遊びに来てな』

 幼き頃から長期休みになるたびに、祖父母の家に帰省していたこともあり、美津子さんは、幼き私を思い出し、小さな私と、今の私を重ねて見るように話した。

 残念ながら、私には美津子さんの記憶がなくて。それを申し訳なく思ってあいまいに笑ってから、心から頭を下げる。