「でも、おじいちゃんが作る気はしません」

 香司である祖父が作ってくれなければ、ウチに新商品はできない。

 祖父が甘い匂いを取り入れてくれる気はしない……そう思ってしまった。

 和バニラの匂いはとても素敵な香りなのだけれど。

「では、僕が作りましょう」

「え? どういうことですか?」

「今日から、令月香の香司ですから」

「令月香の……、香司……?」

「実は、もうじきオープンする聞香処の香司として雇われました。一香さんもお手伝いしてくださるんでしょう?」

「え……」

「これから、よろしくお願いしますね。一香さん」

「ええええー‼」