「僕は六歳まで京都に住んでいたんです。由緒正しき家の跡取り息子として、厳格に育てられました。教育熱心な母は一人息子である僕にとても厳しかった。礼儀作法、言葉遣いはもちろん、書道や華道なども教え込まれました。そんな僕の家は、テレビもゲームも、漫画も、流行りのキャラクターの洋服なんかも全て禁止でした。そして、甘いお菓子も禁止されました」
「お菓子……?」
「はあ? 甘いお菓子を禁止するって、意味がわからんな」
甘い抹茶オレをグイッと飲んで恭太郎が言った。
和菓子屋の息子には納得のいかない話のようだ。
「普通はそう思いますよね? でも、当時の僕はわからなかった。他の家の子どもが食べているお菓子がどれだけ美味しいものなのか知らなかったんです」
私は何も話せなくなった。颯ちゃんも何も言わない。静かに聞いているだけだった。