颯ちゃんの言う言葉は理解できる。彼の祖母は御健在だ。祖母の形見といったわけではないのに、一時も離したくなかったと思う理由は……。
そして、十五年が経った今もその匂い袋を見つけたいと思うのは、どうしてだろう。
私は自分の鞄についている、もう香りのしない匂い袋をキュッと握りしめた。
私もこの匂い袋が大事だ。誰にも渡したくない。それは、颯ちゃんがくれたから。
それだけではない、この匂い袋が子どもの頃の自分を守ってくれたから――。
「もしかして、その匂い袋は、健さんを守ってくれましたか?」
胸の内側から、スッと言葉が出た。
健さんは目を見開いた。誰にも胸の内側は話すつもりがなかったのだろうか。ただ、ひっそり、同じ香りの匂い袋に出会えたらいいと思っていたのかもしれない。
「どうして、そう思うのですか?」
探るように彼が言う。