「きゃあ!」

 低い声に酔いしれていると突然、両脇の下に手を入れられた。その瞬間、私は颯ちゃんよりもずっと高く持ち上げられた。彼が腕を伸ばし、私を持ち上げる。見上げられて、見下げて。私の長い髪が彼の頬をかすめた。

 これは再会するたびに、颯ちゃんがしてくれた儀式。でもそれは全部、小学生までの話だけど。

「おっと、思っていた以上に重いですね」

 颯ちゃんが私を見上げながら言った。

「当たり前じゃない! 私もう高校生だよ! 颯ちゃん、下ろして!」

 恥ずかしさのあまりその場で足をジタバタさせると、隣から怒り声が飛んできた。

「やめろ、おっさんっ‼ 一香のパンツ見えるやろ‼」

「それは、いけませんね」

 途中で入り込んできた恭太郎に止められて、私はそっと地面に置かれた。