この神社は、そとからは一切見えない不思議な神社だった。だから、あまり知られていないのだと、恭太郎は言った。

 恭太郎の言う通り、今日は日曜日だというのに、誰もいなかった。

 観光名所になると、休日は人でごった返す。しかし、この神社はとても静かだ。

 石段を上がって社殿の前に出ると、盛り砂の山がいくつか見えた。

ほかの神社では見られない光景に、私は息をのんでから問う。

「これは……何?」

 白い石がいくつも盛られてある。

 境内では、巻物を加えたキツネの石像が私たちを見ている。不思議な場所へ入り込んだような気持ちだった。

「ここは縁戻しと縁切りのご利益がある神社なんや」

「縁結びじゃないんだ」

「ああ、縁戻しと縁切り。つまり、元々縁がある相手に対して、願いを込める神社や。一般的には、復縁を願ったり、浮気を封じたい人が来るみたいやけど、縁を戻したいと願うのは、人にだけやないと俺は思う」

 恭太郎の言う通りだと私も思った。縁があるのは、人だけではない。

 大切な物との縁を取り戻したいと願う人もいるはずだ。