「あ、あのっ!」

 私は、彼を呼びとめた。

 商店街の人が数人振り向いたのがわかった。人見知りの自分がこんな行動をとるなんてと自分の行動に驚きながらも、そっと言葉を紡いだ。

「その匂い袋は……、大切なもの……ですか?」

「はい。とても大切なものでした」

「おばあさまは、どこで買われたか覚えておられないのですか?」

「祖母はもう年で。聞いてもわかりませんでした」

 十五年という月日は長い。時間が経てばたつほど、皆、記憶はあいまいになる。

 けれど、どうして……、

「どうして、今、なんですか?」

 十五年前にもらった匂い袋と同じ物を、どうして今、探しているのだろう。

 私はふと、そう思ってしまった。