付け加えるように、祖母が言った。
 匂い袋をプレゼントする人は、年々男女問わず増えてきたからだ。

「いえ。思い出の匂い袋を探しているんです。十五年前に祖母からもらった匂い袋なんですが」

「まあ、十五年も前ですか」

「はい。僕が小学校へ上がる前に、祖母が買ってくれたんです。小さな僕はその匂い袋が大好きでした。あまりに気に入りすぎて、毎日持ち歩いていたところ、なくしてしまって……」

 頷きながら、祖母は彼の声に耳を傾ける。

「匂い袋をもらってすぐ、僕は京都を離れることになりました。引っ越し先で同じ香りのする匂い袋を探したのですが、探しても探しても、同じ香りの匂い袋は見つけられませんでした」

「そうでしたか……。その香りは、どのような香りでしたか?」

 そっと、祖母が聞いた。彼は視線を落として言った。

「残念ながら、いつの間にか探していた香りも忘れてしまって……」

 彼の体をまとう色が大きく揺れ動き、くすんで小さくなっていく。その色が「悲しい」と言った。

 それは、色が見えない祖母にもわかるくらいの彼の表情にも表れていた。