自信満々に恭太郎が言う。悲しんでいると言ったところは、スルーされたようだ。

「また初恋の人に会いたいとか言うてんの? 一香」

 首を傾げてサラちゃんが覗き込んできた。

「うーん。会いたいっていうか……、颯ちゃんに関する新しい情報がないかなって、恭太郎に聞いてただけで……」

「恭太郎はアテにならへんで。知ってても言わんやろうし、聞く価値なしや」

「なんやねん、お前」

 恭太郎がサラちゃんを見降ろして言った。

「恭太郎……時々意地悪だもんね……。じゃあ、恭太郎以外の人に聞くね」

 私は独り言のように呟く。

「なんでそうなるねん。颯也のことなんて、誰も知らんわ。あぁ……そうや、昔、颯也は、神隠しにあったって聞いたことがあるわ。きっと今頃、鞍馬天狗につれられて、仲間にでもなってるんちゃうか」

「あかん、恭太郎の頭がおかしなった、行こう。一香」

「うん。行こう。サラちゃん」

「おい、待て、こらっ」

 サラちゃんと笑いあいながら、私たちは歩いた。後ろから恭太郎が追いかけてくる。

 神隠しとか……、天狗とか……、結婚とか……、全部嘘ばっかり。そんなこと絶対に信じない! そう思っているのに、全く情報がないと、心配してしまうよ。

 颯ちゃん、今、どこにいますか? 
 元気でやっていますか?

 私の心は、今日も颯ちゃんのことでいっぱいだった。