「ただいま」
「一香⁉」
「うん……おばあちゃん、久しぶり」
「はあああああ、一香ああああ」
三週間ぶりに突然帰ってきた孫娘に祖母は項垂れるように寄り掛かる。
「もう帰ってこうへんかと思ってた」
そう言った祖母の目にきらりと美しいものが光る。鮮やかな桜色は愛おしい、恋しいと揺れ動いている。祖母の近くに立つ祖父からも祖母と同じ温かな色を感じていた。
「一香さん」
やわらぎ聞香処から出てきたのは颯ちゃんだ。
「おかえりなさい」
静かにそう言った颯ちゃんに私は答えた。
「ただいま」
*
三週間ぶりなのに、数年ぶりのように感じる。
鴨川沿いを歩きたいな……の言葉を颯ちゃんは受け入れてくれて、私たちは今三条大橋の下、鴨川沿いを歩いている。
鴨川から流れる川の音、通り抜ける風、全てが心地よくて、思わず目を伏せた。ふせた瞳の奥にまだ京都を感じる。ああ……私、大好きな場所に帰ってきたんだなぁと思う。
私は彼に報告したかった。この三週間のすべてを。
「私、自分の気持ち、全部話せたよ?」
私はこの三週間、父と母と向き合ってきた。
家族らしい時間を過ぎしていた三週間だったように思う。
