恭太郎に私の初恋はバレバレだ。だから、余計開き直ってしまうのだ。

「颯ちゃんは、おっさんじゃないし! 忘れるなんて無理だから」

「ほな、好きにせえ」

 ムムムムッ。ケンカなんてしたくないのに。

 でも、恭太郎を取り巻く色が、苛立ちと呆れが混ざりあった揺れ方をしているので、私は口を閉じた。

 でも、あの言葉だけは訂正してほしい。颯ちゃんは、おっさんじゃない……。

「はぁ、はたから見てたら、あんたら何やってるん」

 小麦色をまとって近づいてきたのは、小柳更紗(こやなぎさらさ)。同じ高校のクラスメイト、私の大好きな友人だ。

「声、でかすぎ。全部丸聞こえやし。恭太郎も朝から一香、泣かせるな」

「な、泣かせてへんやろ」

「ほんま? 一香」

「うん。泣いてはない。悲しんではいるけど」

「ほら、見てみ。泣いてへんやんけ」