「その時は、一香さんも一緒に来てくださいね。待ってますね」
「え、ええ⁉ 私も、ですか?」
「え? だって、お付き合いしてるんでしょう?」
「いや、そんなっ! めっそうもないっ! わたしなんか……相手にされませんから」
「そうなの? 颯也?」
そんな……直接本人に聞かなくても。
「だからさっき言ったやろ? 俺にはもったいないほどの素敵な女性やって」
「わかりずらいわね。もう、はっきりしなさい。まぁ、ここからは二人だけで、ね?」
颯ちゃんママは、ウインクでも出そうな言い方でそう言って、「じゃあ、颯也またね」と言い、「一香さん、ありがとうごさいました」と深く頭を下げて、日菜子ちゃんを連れて帰って行った。
私は走り出した車を眺めていた。隣の彼も走っていく車を見ている。澄んだ眼差しに私が吸い込まれそうになる。
「颯ちゃんのお父さん、颯ちゃんに少し似てたね」
「え……?」
見た目は違った。でも、彼を取り巻く空気はとても暖かかった。
「雰囲気が似てたなって思って」
「そのように言っていただけるのは嬉しいですね。僕は父と親子になれたと思っていますから」
「え……」
「父は僕を認めてくれたと思います」
