ストンと彼の言葉が胸の内側に落ちた。彼の力はまだ半分しか開花していないのだろう。
負の香りしか届かない彼に幸せの香りが届く日がきっと来る。
そうすれば、彼の世界は、誰もが経験したことのないほど晴れやかでいて、暖かなものになる。力があっても颯ちゃんは幸せになれる。
そう思うのに……目から熱い何かがホロホロと溢れだした。
「どうして、泣くのですか?」
「な、泣いてないです」
「では、一香さんの目にあるものは、何?」
「これは……これは……」
言葉にならない思いが涙になっただけ。
これからの彼の未来が幸せ色に染まると私は信じている。
信じているけれど、力のある彼の苦悩も悲しみも伝わるように理解してしまって、堪えていた気持ちが涙をなって表れたのだ。
誰もいない神社の前で、私の力の話を聞いたとき、颯ちゃんは泣いたりしなかったのに。匂い袋をくれたのに。私は何もできなくて、自分のふがいなさに涙が出る。
「え……」
その時、彼の腕が私の体をそっと抱いた。彼の肩に顔を埋め形になっていて息が止まるかと思った。少しして、彼の香りが鼻先に届く。長い腕が私を引き付けて離さなかった。
「……どうして?」
抱きしめてくれるの?
