「颯ちゃんは?」
「え……」
「颯ちゃんも家族だよね?」
「ええ。母親と日菜子とは血がつながっていますが、新しい父親は違う。彼は時々僕のことを敵を見るように、見ていた」
ドキンとなった。
「どうして……」
そんな目で見られていると思ったら、家族になんてなれない。家族とは、そんな簡単なものじゃない。
「僕の元父親が暴力をふるう人だったからです」
「え……」
「きっと、新しい父親は僕が元父親と同じことをしないか不安だったのでしょう。妹が生まれてからはその思いがどんどん強くなるのが伝わってきました。そして、僕は淡路を離れました」
「……」
「そうちゃーん! 蟹がいたよ! サワガニっていうんだって!」
小さな小石の間、流れが緩やかになる場所で、日菜子ちゃんが新しくできた友だちと一緒に遊んでいる。子どもはすごい、どんな所でも柔軟に対応していく。私たちは日菜子ちゃんに手を振る。颯ちゃんは「落ちるなよー」と伸びやかに言った。
日菜子ちゃんが遊びだした姿を見て、颯ちゃんがホッと息をつくと、また話の続きを聞かせてくれた。
