その場所に到着すると、日菜子ちゃんは瞳を輝かせた。
目の前に見えるのは鴨川。その川を横切るように飛び石が置かれてある。
日菜子ちゃんの行きたかった場所は鴨川デルダ。
「鴨川デルダ」とは、京都出町柳駅を降りてすぐにある鴨川の三角州。高野川と賀茂川の合流地点のことだ。後ろには、比叡山、そこから視線を動かせば大文字山が見える。この鴨川デルダは普段、学生たちが集まる場所だったり、浅瀬の川で遊んだり、市民の憩いの場なのだが、最近はアニメの舞台になったり、映画のロケ地になったりもしている。
鴨川デルタには、川を渡ることができる飛び石があり、映画の主人公たちがこの飛び石を飛ぶ姿がよく映し出される。
それらの映像を見ていた日菜子ちゃんは京都へ来たら行ってみたいと思っていたそうだ。
「ここが鴨川デルタ? すごいっ! 映画で見た景色と一緒!」
日菜子ちゃんは階段を降りて、飛び石前まで走っていく。
一刻も早く飛び石を飛びたいようだ。足の速い日菜子ちゃんはあっという間に飛び石を飛んでいく。追うことを諦めた颯ちゃんが背後から声をかけた。
「日菜子、危ないからゆっくりな」
「はーい!」
あっという間に日菜子ちゃんは、デルタの飛び石を飛び越えて向こう岸に着こうとしている。