「日菜子は、どこか昔の一香さんに似ていませんか?」

 タブレットを覗き込む彼女を見ながらぽつりと颯ちゃんが呟いた。やはりこちらは見てくれない。私は彼に視線を向けずに答えた。

「そうかな……。あまりそうは思わないけど」

 私はあんなに可愛くないし、あんなに素直に甘えたりもできない。私は颯ちゃんに言いたいことがたくさんあるけれど、日菜子ちゃんのようにするりと言えない。

「僕が初めて会った時の一香さんも香りについてたくさん勉強したいと言っていました。日菜子のように目をキラキラさせて」

 颯ちゃん、そんな風に見てくれていたんだ……。

「私、祖父母が大好きだったから、祖父母の好きなものを好きになりたかったんです」

「今は?」

 そっと彼が問うた。私は伏目がちで答えた。

「今は……私自身が香りの世界を好きになりました」

「……」

「私のために、もっともっと勉強したいと思っています」

 私の声に、彼が小さく頷いた。