「こんな可愛らしい方と一緒に働けるなんて、颯也は幸せものね」

「え、あ、いえ、そんななことはっ」

 颯ちゃんとそっくりな美人の颯ちゃんママにそんなことを言われるなんて、私は恥ずかしくて目を伏せる。

「日菜子もそう思うでしょう?」

「……うん」

 しぶしぶと日菜子ちゃんがうなづいた。

 二人をまとうオーラはとても暖かい。日菜子ちゃんは苦い顔をしているけれど、それはきっと嫉妬なのだと思う。大好きな颯ちゃんが幸せそうで、嬉しい。けれど、悔しい……そんな感情を表す色の揺れ方をしていた。

 颯ちゃんママからは、颯ちゃんの幸せを喜ぶ色。妹の日菜子ちゃんも同様の色を持っている。私は二人の色に心が和んだ。嬉しくなった。

 そこに颯ちゃんへの愛が見えたから――。

 そして、私は二人の幸せな色を見ながら、同時に不思議な感覚に襲われていたのもたしかだった。

 彼はほとんど自分の話をしない。家族の話も聞いたことがない。彼はずっと一人で暮らし続けていたような雰囲気をまとっていたからだ。

「そうちゃん、お着物着てどこに行ってたん?」

 颯ちゃんに抱かれたまま、日菜子ちゃんが言った。

「今日は組香に行ってたんや」

「組香って何?」

きょとんと首をかしげて、日菜子ちゃんが問うた。