今日はお客様の少ない日だった。私は勘定台で組香について勉強をしていた。

 組香のほとんどは、和歌になぞられてルールが決められている。和歌の世界観に思いをめぐらしつつ香木の香りを鑑賞することで、奥深い優美な時間が流れるのだという。

 今日、颯ちゃんが行った組香は「星合香(ほしあいこう)」と名付けられた組香だと祖母から聞いた。

 「星合香」のルールを専門書を読みながら理解していく。

 この組香のテーマの和歌は

『恋ひこひて 逢ふ夜はこよい 天の川 キリたちわたり 明けずもあらなむ』 詠み人知らず

 この和香になぞらえて校正された組香だ。

「星合香」とは、最初に牽牛と織姫の香りを聞き、その後、七つの香りを聞いて牽牛と織姫を探し当てる季節の組香だ。見事当たれば二つの星が出会う「星合」。どちらも的中しなければ「大雨」、牽牛だけあてると「宵雨」、織姫だけあてると「暁雨」になるという。

 様々な香りを記憶して、ある香りだけを当てるというのは、とても難しい。

 しかもこの組香は九つの香りを聞く。

 きっと私なら混乱してしまって、当てられない。結果は大雨になるだろう。

 けれど、颯ちゃんなら大丈夫だと確信していた。彼は「星合」になるはずだ。

 彼の香りを聞き分ける能力に、きっと誰もが驚くだろう。