『颯ちゃんが組香に?』
『せや。令月香の立派な香司のお披露目会みたいなもんやな』
祖母は、頬もオーラも全て幸せ色に染めて言った。
『そっか。颯ちゃんなら安心だね』
――立派な令月香の香司。
そんなことを言われてしまっては、私も行きたいとは、口が裂けても言えない。
『組香で皆さんに、颯也くんの顔を覚えてもらおうと思って。これからもいっぱい可愛がってもらわなあかんしな。あの子、器用そうに見えて、不器用なところもあるやろ? 自分から輪の中に入っていったりせえへんからな』
祖母は、颯ちゃんの本当の性格をよくわかっている。颯ちゃんは器用そうに見えて、とても不器用な一面を持っている。人との関わりについては、特に。
私は祖母に『そっかな。そうかも』と笑ってごまかした。