電話が鳴った。
その音を聞くと、私は動けなくなる。
息をひそめて立ち尽くす私の不安をかき立てるように黒電話が鳴り続けている。
嫌だと思う。その音を聞きたくないと思うのに、私は電話そばから離れることができない。
電話の向こう側に、母親がいるのではないかと思うからだ。
――かかってくるはずなんてないのに。
母親から最後に電話がかかってきたのは、半年前だ。
『一香、元気?』『元気だよ。お母さんは?』『お母さんも元気』そんな会話をしてから、私たちは互いの近況報告をしあう。そして最後に『おばあちゃんに変わってもらえる?』それだけ言って、私との通話は終了する。
電話越しの会話はテンプレートがあるのかのように毎回同じ会話だった。とても親子には思えない会話。二人の口ぶりはどんどんよそよそしくなっていった。
そんな電話を繰り返していたある日、私はつい『もういいよ?』と言ってしまった。
『お母さん、もう無理しなくていいよ?』と。
それからは母から電話がかかってくることはない。
もうかかってこないだろうと思っているのに、私はまだ家の電話が鳴るたびに心を痛めてしまう。母だったらどうしよう……。と思い悩んでしまうのだ。
今日の電話は珍しく鳴り続けている。
その音を聞くと、私は動けなくなる。
息をひそめて立ち尽くす私の不安をかき立てるように黒電話が鳴り続けている。
嫌だと思う。その音を聞きたくないと思うのに、私は電話そばから離れることができない。
電話の向こう側に、母親がいるのではないかと思うからだ。
――かかってくるはずなんてないのに。
母親から最後に電話がかかってきたのは、半年前だ。
『一香、元気?』『元気だよ。お母さんは?』『お母さんも元気』そんな会話をしてから、私たちは互いの近況報告をしあう。そして最後に『おばあちゃんに変わってもらえる?』それだけ言って、私との通話は終了する。
電話越しの会話はテンプレートがあるのかのように毎回同じ会話だった。とても親子には思えない会話。二人の口ぶりはどんどんよそよそしくなっていった。
そんな電話を繰り返していたある日、私はつい『もういいよ?』と言ってしまった。
『お母さん、もう無理しなくていいよ?』と。
それからは母から電話がかかってくることはない。
もうかかってこないだろうと思っているのに、私はまだ家の電話が鳴るたびに心を痛めてしまう。母だったらどうしよう……。と思い悩んでしまうのだ。
今日の電話は珍しく鳴り続けている。