店内の隅に座っていた彼女が立ち上がった。
柔らかな色に包まれた彼女はそのまま彼の側へ歩いてきた。
そっと彼の肩に手を置くが、彼は彼女に気づかない。
彼女を取り巻く薄紫色は、悲しみの色に揺れている。
やはり二人が交わることはないのだろうか? 二人の悲しみが私にも押し寄せた。
その時、少しだけ開いた引き戸式の扉の奥からかすかな鳴き声が聞こえた。
ラベンダーの彼女は、その声に気づくと、扉の方へ歩いていく。
「ちょっとだけ貸してくれる?」
外から、彼女の声が聞こえる。
少しして、狭い扉の隙間から、白猫が入ってきた。その白猫の色は薄紫だった。
ラベンダー色を宿した猫は、青木さんのそばへ寄っていき、足元にすり寄って、何度も何度も鳴いている。
彼は、足元から離れない猫を持ち上げると、目を合わせて言った。
「どうした? お前、迷子か?」
「にゃあああん」
「お前どこから来てん」
「にゃああああん」
「……よく鳴く猫やな……って、あれ? なんでこの猫、ラベンダーの香りがするんや……」
震える声でそう言う彼がふと私のほうを見た。
「あなたが悲しむから……心配しているんだと思います」
「俺が悲しむから?」
目を見開く彼が、「さなえ……か?」と愛しく彼女の名を呼んだ。
柔らかな色に包まれた彼女はそのまま彼の側へ歩いてきた。
そっと彼の肩に手を置くが、彼は彼女に気づかない。
彼女を取り巻く薄紫色は、悲しみの色に揺れている。
やはり二人が交わることはないのだろうか? 二人の悲しみが私にも押し寄せた。
その時、少しだけ開いた引き戸式の扉の奥からかすかな鳴き声が聞こえた。
ラベンダーの彼女は、その声に気づくと、扉の方へ歩いていく。
「ちょっとだけ貸してくれる?」
外から、彼女の声が聞こえる。
少しして、狭い扉の隙間から、白猫が入ってきた。その白猫の色は薄紫だった。
ラベンダー色を宿した猫は、青木さんのそばへ寄っていき、足元にすり寄って、何度も何度も鳴いている。
彼は、足元から離れない猫を持ち上げると、目を合わせて言った。
「どうした? お前、迷子か?」
「にゃあああん」
「お前どこから来てん」
「にゃああああん」
「……よく鳴く猫やな……って、あれ? なんでこの猫、ラベンダーの香りがするんや……」
震える声でそう言う彼がふと私のほうを見た。
「あなたが悲しむから……心配しているんだと思います」
「俺が悲しむから?」
目を見開く彼が、「さなえ……か?」と愛しく彼女の名を呼んだ。