絞り出したかのように言った彼の声の後、部屋の隅の彼女の薄紫の色が大きく変化した。

 ふわふわと揺れ動くその色は見たことのない色の膨らみ方だった。
 あの形は何?

 見たことのない色のふくらみに戸惑いながら、けれど一つだけわかったことがあった。

 あの色合いの変化は、”愛”を示している。
 ビー玉のような涙をぽろぽろとこぼす彼女から“愛している”の色を強く感じる。

 もしかして、あなたの『会いたくても、会えない人』は……彼?

 青木さんに、会いたかったの?

 私はこみあげてくる熱い思いを胸の内側に閉じ込めて、息をすって吐いた。
 そして、口を開く。

「私の知り合いで……、やせ型で水色のワンピースがよく似合う綺麗な女性がいるんですが……、彼女は令月香のラベンダーのお香の大ファンだと言ってくださいました」

「え……」

 目を上げた青木さん。真っ赤に晴れ上がった瞼をしていた。

 私は伝えなければいけないと思った。
 初めての聞香体験につき合ってくれた時、彼女が伝えてくれた”本心”を。