悲しみに膨らんでいく青木さんの色を、祖母が優しく撫でて、色の膨張を抑えていた。

 祖母が背中を撫でるだけで、その悲しみの色が増えることはない。減ることはないが、これ以上増えない。それはとてもすごいことだと思った。

 私は色が見えるけれど、操ることはできない。
 祖母はいとも簡単にそれをすることができた。

 いや、見えないからこそ、できるのかもしれない。祖母はこのお客様を心から心配しているのだ。

「青木さんは、一年前に結婚したばかりの奥さんをなくされたんや……。奥さんは、令月香のラベンダーのお香のファンやったそうでな……」

 言葉が出なくなった青木さんの代わりに、祖母が静かに話し出した。