「だから、自分の命がこの世で完了した時、次の世界で会えると」

 次の世界で会える。

 そう思えば、人は生きていけるのだろうか。

 でも、私は、この世界から大切な人がいなくなるなんてやっぱり考えられない。隣の世界で待っていてくれたとしても、悲しいことには変わりはない。

 どうにもならない現実を受け入れることができない私は、だだをこねる子どもと一緒だ。
 こんな話を颯ちゃんに話しても困らせるだけ。伝えてはいけない。

 心のどこかではそう思っているのに、祖母を思う私は、颯ちゃんに聞いてしまうのだ。

「でも、そう思っても、悲しいよ……。大切な人がこの世界からいなくなるなんて……」

 会いたくても、会えないなんて……悲しすぎるよ……。

 このお盆の時期を皆どのように考えて過ごしているのだろう。

 大切な人を亡くしたことがない私でも、誰かを失ったらと考えただけで胸が苦しくて立っていられなくなる。

「そんな時は、この世から、故人を思い出すといいそうです」

「思い出す……だけ?」

「亡くなった人のことを誰かが思い出すと、天国でその人のまわりに綺麗な花が咲くそうです」

「じゃあ、いつでも故人を思い出してもいいの? 会いたいと願ってもいいの?」

「ええ。そう思うたびに、故人のまわりに次々と花が咲く。あなたの想いが、故人を幸せにするのです」

 会いたいときは会いたいと思っていい。
 悲しいときは、その人を想って泣いてもいい。

 私が泣けば、あなたにたくさんの花を咲かすことができる。

 そう思えば、なんとか乗り越えていけるかもしれない。
 いつの日か思い出にできるのかもしれない。

 そうやって人々は、大切な人との別れを受け入れているのかな……。

 そして、残された人のために、一年に一度、こうやってご先祖様はかえってきてくれるのかもしれない。