「ほらまたそんな顔をして。一香さんは想像力が豊かですし、いろんなことに敏感なんですから、未来を思って悲しい顔をしないでください」

 時々、エスパーのように私の悲しみを言い当てるのは、彼だけだ。

 彩乃さんの時もそうだった。彼は人の悲しみに、とても敏感だ。

 そして感じ取った悲しみに、痛苦しいほどに優しい。

「うん……」

 そう頷きながらも私は聞きたかった。

 私の今の悩みに、悲しみに、答えてくれるのは、颯ちゃんだけだと思ったから。

「颯ちゃん……、もし、大切な人がいなくなったら……、どうしたらいいの?」

『会いたくても、会えない人がいるんです』

 ふとラベンダーの彼女の言葉がよみがえる。

 どうしようもなく会いたい人、それは、かけがえのない大切な人だ。

 風の絶えた夏の真っ暗な夜の闇を引き裂くように、隣の彼が優しく話し出した。

「昔こんな話を聞いたことがあります。現世は、あの世とあの世の通過点だと」

「通過点?」

「ええ。命は巡る。一つの世界が終わっても、また次の世界で続いていく」