東山の六道珍皇寺で行われる「六道まいり」は、ご先祖様の霊を迎える行事だ。この町は、ご先祖さんたちを親しみを込めた意味でおしょうらいさんと呼ぶ。お盆の少し前におしょうらいさんを迎え入れ、五山の送り火で極楽浄土へと帰っていただく。おしょうらいさんたちは五山の送り火までこの町で過ごすと聞く。

 不思議な気もするけれど、この町で暮らしていると、不思議なことを不思議なことだと思わないようになった。

 私に力があるように、命のない人が、町を歩いていてもおかしくないとも思う。

 そう思うのに……、いつか私の大切な人があちら側へ行ってしまうのではないかと不安にも思うのだ。

 亡くなった人をお迎えするお線香やご進物を買いに来られるお客様は、この場所にいない人達のことを思って、令月香へ来られる。

 故人の話を聞くたびに、体調が悪く、奥の部屋で眠っている祖母のことを想ってしまう。もし、祖母に何かあったら、どうしよう……とそんな心配ばかりしてしまうのだ。

 普段よりも過剰に心配してしまうのは、きっと季節的なもの。そんな縁起でもないこと、考えてはいけない。

 頭ではそうわかっているけれど、気持ちが不安定になると私は考えてしまう。

 力のある私を何も言わずに受け入れてくれた祖母。大好きな祖母がいなくなる世界を私は想像すらできない。