京都を好きになってほしい。また遊びに来てほしい。
 そんな願いの詰まった花提灯だとおもったから、受け取るのは私じゃないと思った。

 そんな私を見て颯ちゃんは「一香さんらしいですね」と微笑んだ。

 少し歩くと、素敵なライトアップが見えた。
 対岸では土手を使って、体感型インスタレーションが広がっている。

 まるで、そこに天の川が降りてきたようだった。

 人々は夏の夜を彩る空間に癒され、魅了されている。
 こんなに美しい夏の夜を見ることができるなんて思ってもみなかった。
 うっとりとライトアップを見ていると、颯ちゃんがふと声を漏らした。

「一香さん、あまり落ち込まないでくださいね」

 その言葉に彼を見上げた。

「一香さんは、色が見える分、他人の感情に敏感なんですから。それ以上……感じなくていいですから」

 彼は、ライトアップを見ながら言った。

 私が落ち込んでいること、ミスを反省していること。

 私の本音なんて、年上の彼には、きっと丸見えなんだろう。

「……うん」

 そして、彼は一人で抱え込もうとする子どもじみた感情にも気づいてくれたのかもしれない。

 颯ちゃんは、いつも私の悲しみに気づき、救い上げてくれるから。

 そんな颯ちゃんに隠し事をしても無駄だと思った。

 私が隠しても彼には伝わってしまう。それならば、次からはちゃんと言おう。

 なんでもため込んでしまう性格は私の短所だ。その短所を知り、受け止めてくれる人がいるのだから、これからはきちんと言葉にしようと思った。