私たちは、どこまでも続くように見える長い石階段を登り、神社へ行った。
そこで、金魚すくい、まと当てを楽しみ、颯ちゃんにカステラを買ってもらったり、自分のお小遣いでわたがしを買って食べたり、思う存分、お祭りを楽しんだ。
帰り道、慣れない浴衣姿に、下駄を履いた私は、長い階段を降りて歩けなくなった。
気づけば、颯ちゃんの広い背中が目の前にあって、『一香さん、どうぞ』とそこに乗るように促された。
硬くて、広くて、温かくて。
そして、とてもいい香りがしたのを覚えている。
私は、颯ちゃんの背中に揺られながら、この人の香りと、そして、颯ちゃんから色が見えないことにひどく安心して、ずっと悩んでいたことを、話し出してしまった。
――『ねぇ、颯ちゃん……、私ね、人に、色が見えるんだ……』