夏になるにしたがって、商店街全体が活気づいてくる。夏の京都は、京都らしい様々なイベントがあり、そのイベントを楽しみに全国からたくさんの人々が集まってくるからだ。

 けれど、夏の京都は盆地という地形も手伝ってとても蒸し暑い。
 観光客の皆さんは、晴れ上がった夏の陽に当たらなくてもすむアーケードのついた寺町商店街を体を休めるかのようにゆったりと歩いている。

 商店街に並ぶ様々なお店を眺めながら歩いて、ふと鼻先をくすぐる香りに導かれるように、令月香に足を運んでくださる方が増えだした。

 フラッとへお店へ寄ってくださったお客様は、お香には詳しくない方が多く、香りを楽しみたいけれど、どれを買っていいのかわからない、そう言われることが多い。

 そんなときは、一番簡単に香りを楽しめるスティック型のお香をおすすめすることが多い。

 若い女性を中心にスティック型のお香は、今日もよく売れている。
 気軽に楽しめるお香から入り、皆お香を好きになってほしい……

 そんなことを思いながら、勘定台に立っていた。