今日はもう誰も来ないかも。
 少し早いけれど、閉店準備を始めてもいいかもしれない。私は店内の掃き掃除をしだした。

 あとで、颯ちゃんに連絡しておこう。『ラベンダーのお香が売り切れているので、補充してください』と。倉庫の鍵を持っているのは、祖父と颯ちゃんだけだから。

 店内の掃き掃除が終わり、レジの集計に入ろうとしたところで、扉が開いた。
 お客さんかと思い振り向くと、そこに恭太郎がいた。

「一香」

 恭太郎は、今日も割烹着姿だ。
 令月香よりも雫屋さんの閉店時間は一時間速い。仕事が終わって、そのまま来たのだろう。

「どうしたの?」

「なぁ、これ、見たか?」

 そう言って見せられたのは、スマホ画面。緑色の吹き出しがいくつも並んでいるラインアプリの画面だった。グループは、一年生の時同じクラスになった仲良しメンバー。男女合わせて八人が集まったグループだ。

「私、まだ見てない。何?」

 仕事中、スマホを見ることはない。

 なにかあったのだろうか。
 じっくり見ると、仲間たちの会話が弾んでいるのが分かった。