「えっと……ラベンダーは……」

 普段ラベンダーのお香が置いてある場所に、お香がない。
 商品棚の下、引き出しの中の予備をみたけれど、そこにもラベンダーはなかった。他の香りは全てそろっているのに。

「申し訳ございません。ただいま、ラベンダーは売り切れておりまして」

 趣味のお香が売り切れるなんて、珍しい。

「よければコーンタイプや渦巻型タイプのお香もございますが」

 気軽に使えるタイプはスティック型だけではない。コーン型や燃焼時間のない渦巻型タイプなどもある。

「では、それをお願いします」

「少々お待ちください」

 そう言って、コーンタイプや渦巻タイプのお香の棚を覗いてみたけれど、すべてラベンダーの香りだけ売り切れていた。

「大変申し訳ございません。どちらも売り切れておりまして。もしお急ぎでしたら、他のお香専門店さんをのぞかれてもいいかもしれません」

 京都にはたくさんのお香専門店がある。ライバルというより、同盟店のような気持ちでいると、以前祖母が話していたことを思い出し言った。

「いえ」

 けれど、彼女はきっぱりと断った。