彼女の心地の良い色に、自然と私の口角も上がる。笑顔になってお客様に声をかけた。

 彼女は一瞬驚いたように目を見開いてから、頭を下げた。私も頭を下げる。
 彼女はそのままある場所へ歩いていって「あれ?」と声を零した。

「どうかされましたか?」

「あ……、ここにスティックタイプのお香があったと思うのですが……」

「スティックタイプのお香ですね。そのタイプのお香は、以前はその棚に置いていたのですが、最近棚替えをしまして、こちらです」

 私はスティックタイプのお香のある場所へと案内した。

「わぁ、たくさんありますね」

「はい。お好みの香りをお選びください」

 令月香では気軽に楽しんでもらえるお香として、スティックタイプの趣味のお香がある。

 最近は、気分や好みに合わせて使っていただけるようにと種類が増えた。

 昔からあったカモミール、すみれ、さくら、キクに加えて、グレープフルーツ、ゆずなどの果実の香りが加わり、様々な香りが並んでいる。
 今は“和バニラ”の香りが開発中だとも聞いた。

「これだけたくさんあると浮気しちゃいそうだけど……、私はいつものラベンダーの香りを」

 彼女はラベンダーの香りを選んだ。