七月の祇園祭が終わると、次はお盆がやってくる。
お盆が近づくと、お香専門店である令月香は忙しくなる。
お線香などの進物やお共えを買いに来られるお客さんが多くなるからだ。
ちょうど、私が夏休みで良かった。毎日、手伝いができる。
庭先を掃き終えて、店内へ戻ると、勘定台に立っていたはずの祖母がいなくなっていた。トイレかな? それともお客さんが来ないので、奥で休んでいるのかもしれない。
祖母はいつもハツラツとしているけれど、最近よく疲れたと言葉を零す。
もう七十歳を超えているので、気にかけている。私がいる時はできるだけ休んでほしい。
祖母の代わりに勘定台に立っていると、少しして一人のお客様がやって来た。
細身で品のある優しそうな女性だった。二十代後半といったところだろうか。長い髪を一つにまとめた彼女は、薄紫の優しい色をまとっていた。
その色は右へ左へと揺れ動いている。心地よい気分の時に見える色の揺れ方だった。
「いらっしゃいませ」