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きらきらした日を背に受けながら、私たち三人は寺町商店街へ帰ってきた。
恭太郎とは雫屋さんの前で別れて、私と颯ちゃんは、聞香処で二人きりになっている。
二人の間に流れる空気は、鉛のように重苦しい。
それは、私の恋心が颯ちゃんにバレてしまったから。
颯ちゃんが何も言わずに考え込んだ顔をしているのは、私からの言葉を待っているのかもしれない。
あなたに恋をしています。
だから、ずっと見ていました……と。
そう言葉で伝えなければいけない雰囲気を、彼が作っているのかもしれない。
重い空気の中で、そんなことを一人でぐるぐると考え込んでいると、少しの沈黙の後、颯ちゃんが目を合わせてきた。胸がドクンとなる。視線を外せない。
『一香さん、本当に……何もされていませんか?』
『え?』
『猿太郎に』
『恭太郎に?』
『ええ。何事もなく帰ってきてしまいましたが、やはりどう考えてもおかしいでしょう。一香さんが涙目になっているなんて』
『へぇ?』
『やはり猿太郎のせいなんですね。今から雫屋さんへ行ってきます』
『ちょ、ちょっと待って、颯ちゃん!』
――『ずっと涙目ですが、どうかされたんですか?』
さきほど、安井金毘羅宮の鳥居の前で、颯ちゃんからそう言われた。
あの言葉は、私の幼い恋心に気づいた颯ちゃんの意地悪だと思っていた。
私は今日も大人な彼の手のひらで転がされている。
そう思っていたけれど、颯ちゃんはまじめな顔をして、今も思い悩んでいる。
もしかして彼は、本当に……
『私が恭太郎に泣かされたとでも思ってるの?』
『それ以外、何があるんですか?』