今朝は一人で学校に行くことになった。朝からラインで「一人で行くね」と恭太郎に告げると、「了解」とだけ返事が来たからだ。
商店街のアーケードを出ると、晴れ上がった空が目の間に広がっている。
柔らかな新緑が目に眩しい夏の初め、私は京都の街を眺めながら歩いた。
どの場所も、祖父、祖母、そして恭太郎に教えてもらったところばかりだ。
みんなの優しさを思い出し、癒されながら足を進めると、風に乗って懐かしい匂いが届いた。
私はそちらに視線を投げた。
そこには長い石階段が連なっており、その石階段に傘をさすかのように木々が葉を広げている。
風が起こると葉たちがいっせいに踊りだした。
さわさわと揺れる音を聞きながら、この長い石階段を登ると、神社があるのだ。
私はその神社へ行ったことがある。
私は、長期休みになるたびに京都へ遊びに来ていた。
小さなころの記憶だからか、全ての思い出が鮮明に残っているわけではないけれど、この石階段での思い出は、ずっと心に残っている。
この場所は、私が初恋を知った場所だった――。