そしてテーブルには、湯気立つ炒飯の入った皿が二つ置いてある。

「食べよ食べよ!」

 席に着いた美玲に、竜二はスプーンを突き出した。

「うむ。いただきます」

 受け取ったスプーンを一旦テーブルに起き、美玲は両手を合わせた。

「いただきます」

 竜二も両手を合わせると、スプーンを握り締めた。

「…我ながら美味いな…どうだ美玲?」

 一口炒飯を食べた竜二は、期待を込めた視線を美玲に投げ掛ける。

「…どうだとは、何がだ?」

 美玲は咀嚼し終えた炒飯を飲み込むと、首を傾げた。

「味だよ。美味くないか?」

 竜二はスプーンを子供のようにブンブンと振り回した後、不安そうな顔を浮かべた。

「味?味は塩と胡椒と酒と醤油と米とネギと」

「ストップ!ストップ!美味いか美味くないか聞いてるんだよ!いつも通りの味の解析はいいから、今日こそは聞かせてくれ!美味いか?」

 言葉を遮り、美玲の前に手を差し出した竜二は、期待の籠もった瞳で美玲の表情を伺う。

「美味い、美味くないの違いは分からない。私は飯を食べれる物か食べられない物かでしか判断した事がないからな」

「それは知ってるよ。でも好きか、嫌いかで言ったらどっち?」

「好きも嫌いも分からない。私は好きも嫌いの感情も分からないからな」

「うーん…また、食べたい?」

 竜二は困り顔で尋ねた。

「私は人間が食べられる物なら、なんでもいい。食事を再開していいか?口に飯が入った状態での会話は、礼儀に反すると私は学習済みだ」

 美玲は炒飯を凝視したまま言った。

「うん、ごめん。食べよう」

 竜二は苦笑いを浮かべた。