靴を履いて、自転車に乗り、家を出る。
私の家があるのは、田舎の小高い山の上にある住宅地。
中学校に行くには、長い長い坂道を降りて、この山を降りなければいけない。
少し自転車を漕ぐと、もうそこは下り坂。
夜の間降り続いていた雨は止み、暖かな朝の光が雲の間から差している。
正面から吹き付ける清々しい風を感じながら、坂道を下っていく。
満開の桜並木が、私を導くかのように続いている。
坂道を一番下まで降りると、近くの公園で待ち合わせしている、私の親友と男友達────萩本 玲奈(はぎもと れな)と、瀬川 遥人(せがわ はると)に会いにいく。
「レナ、ハルト、おはよう!」
「あ、志帆、おはようー!」
「よう、志帆!」
レナとハルトは、この山の麓のあたりに住んでいる。私とは同じ小学校の出身で、昔からこの3人でたくさん一緒に遊んできた。
────そして、私はいつからか、ハルトに恋心を抱くようになった。
レナはそのことを知っているが、ハルトにはこの気持ちは伝えられそうもない。
「一緒に行こっか!」
「うん!」
今日は、レナ、ハルトと一緒に中学校に行く約束をしていた。
私たちは3人で、自転車を漕いで中学校へと向かう。