(あれはレジ部のバイトの子……)

とても可愛らしい子で、私が退勤後の買い物でレジを通過する時、いつも「お疲れ様です」とはにかんだ笑顔で言ってくれる。小柄な彼女は身体のパーツもすべて小さい。手なんて子供のようで、同性の私でも見とれてしまう。

彼女は顔を真っ赤にして恥ずかしそうに何か言っていた。あんな物陰で喋っていたということは……。

足音を忍ばせてエレベーターに乗り、来た道を戻る。

(そうよね。うん、そうだよね)

あんな可愛い子に告られたら幸せだよ。彼女なら背が低い柳井君にお似合いだし、柳井君はとても優しいし、あの子もいい子そうだし。

アパートまでは二駅。電車に乗り、膝にタピオカの袋を乗せてぼんやり宙を見つめる。急に疲れを感じて長いため息が漏れた。

(みんな恋愛してるんだなぁ……)

ごく自然に、当たり前に。

応援しているのに何だか寂しかった。柳井君はいつだってほんわか笑って待機してくれているみたいな、勝手にそんな気になっていた。それは仕事の時だけなのに。公私混同しちゃだめじゃない。

その時、膝から紙袋が滑り落ちる感触と同時にビシャッという嫌な音がした。

「あっ……」

最悪なことに、ぼんやりしていたせいでミルクティーを床にぶちまけてしまった。お洒落なパッケージに入っていた姿は見る影もなく、それは泥の水たまりのように電車の床に広がっていく。電車が揺れる度にタピオカがころころ転がった。